裏薄荷の初ママ日記

システムエンジニア裏薄荷が初めてママになった奮闘記

※システムエンジニアとして技術系のブログ あまやどり開発雑記も運営しております。

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隣のぐっさん (はてなインターネット文学賞「わたしとインターネット」応募用の創作小話)

ジョギングする二人の人影のシルエットです。
 

こんにちは。初めましての人もそうでない人も、裏薄荷(うらはっか)です。

 

今日は 

 

はてなインターネット文学賞「わたしとインターネット」

 

にチャレンジしよう!ということで、テーマに沿った創作小話を投稿いたします。

 

ーー 概要 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

◆タイトル
隣のぐっさん


◆あらすじ

"私"の隣には、いつも"ぐっさん"がいる。

ぐっさんは博識でなんでも知っている。

――ぐっさんのいない生活なんて考えられない私の日常を切り取ったお話です。

 

◆文字数

2109文字

※3~5分もあれば読み終わる長さです。 

 

※この作品はフィクションです。

※よろしければ末尾に記載した参考文献のリンク先まで読んでください。

 

ーー 以下、本文です ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

私の隣には、いつもぐっさんがいる。

 

「今日はこれな。」

「あ……さんきゅー、ぐっさん!」

 

ぐっさんから差し出された目録に、さっと目を通す。

 

……

『自分のことを本当に大切にしてくれる人ってこんな人よ』

投資信託 平均リターンランキング』

『9割の人が知らない エクセルの上級ショートカット』

『双子の赤ちゃんパンダ、1回のほ乳量が増え睡眠時間も長く』

……

 

カテゴリも何もなく、雑多なタイトルが一覧で並ぶ。

……雑多だけれども、多少なりとも気になる内容ばかりなのが不思議だ。

 

その中でも強く興味を引かれたタイトルについて、ページをめくり、本文を読む。

 

「んー……ぐっさん、これ読み終わったからいらない。あとこれは興味ないかな。」

「はいよ……削除しといた。」

「そういえばぐっさんさ、台北ってどこだか知ってる?」

「ここだよ。台湾の都市。Wiki見たら?」

「やっぱ台湾なんだー。そういえばぐっさんさ、オリンピック開会式の各国入場曲で、ニンテンドーの曲がなんで入ってなかったかって知ってたりする?」

「んー……話題にはなってるみたいだね。閉会式なんじゃないか、って説が有力みたいだけど。」

 「誰が選考してんだろね。」

「知ってる限りだと該当する情報ないね。」

 

ぐっさんは取り留めもない私の興味に応えてくれる。

他人(ひと)に聞いたら恥ずかしいことも、ぐっさんになら平気で聞くことができる。

 

 

 

彼とのドライブ、私たちの間には、いつもぐっさんがいる。

 

「お昼どうしよっか?」

「んー……思ったよりも遅くなっちゃったから、普通のお店開いてないよねぇ……。ベーカリーでパン買って、車の中で食べる!とか。」

「いいね。じゃ、ぐっさんに聞いといて。」

「はーい。」

 

「現在地から1km圏内だと……こんなもんかな。」

 

ぐっさんが探してくれたベーカリーを一つずつチェックする。

なるべく通り道で、ぐっさんの評価が高いところを見てみる。

 

「ぐっさん、ここまでの行き方教えて。車だよ。」

「 んー……最短経路はこれかな。」

 

道路の混雑状況も加味して、ぐっさんが道案内をしてくれる。

けれども……

 

「いや流石にこれは……細いな。」

「細いよね……スルーしてまっすぐ行くルートに変えよう。」

 

ぐっさんは車に乗ったことがないのか、車で行けないような、もしくは行けるにしてもあまり行きたくないような道を案内してくることがある。

 

「着いたー。」

「どうよ、俺の道案内?」

「んー……今日はイマイチだったかな。」

 

 道案内を頼むと、ぐっさんは毎回どうだったか聞いてくる。

正直に答えることもあるけれど、基本は面倒だから、何も言わない。

それでもぐっさんは、問題なく新しい道を教えてくれる。

 

ぐっさんにも、できることとできないことがある。

できないことは、どんどんできるようになっていくかもしれない。

……できることは都合よく、ぐっさんに頼っていく。

 

 

 

小説や漫画を読んでいる時、隣のぐっさんが話しかけてくることがある。

 

「これ興味あると思うんだよね。」

「ぐっさん、邪魔。」

「この前熱心に見てたブランドの新作ワンピース、どうかな?」

「……。」

 

ぐっさんが見せてくる中で、興味を惹かれるものも中にはある。

誘惑に負けてついつい眺めてしまう。

……それでも洋服は、やっぱり実物見て買わないと失敗するからね。

 

「マンガ読むならこういうのどう?」

「……(気になる)……。」

 

あらすじだけ読んで気になるなら、いつものマンガアプリで無料で読めないか探してみる。読めないなら……全体のあらすじだけ公開しているサイトがないか探してしまう。

 

「ぐっさん、このマンガのあらすじネタバレで公開してるサイトない?」

「それなら……こんな感じかな?」

 

この手のサイトって著作権に抵触してるよなぁ……。

それでも衝動買いを抑えたくて、ついつい利用してしまう。

 

「でもぐっさんて、いつも読んでる小説投稿サイトのオススメ新作とかは出してこないよね。」

「まあ個別の小説オススメするのは無理だね。」

「そりゃそうか。ぐっさんて自分の趣味嗜好とかないんだもんね。ハマってるマンガの最新話更新は教えてくれるけど。」

「ネットで何をどれだけ読んでるかは一通り知ってるからね。」

「ハハ……ほんとストーカーみたいで気持ち悪いよね。」

 

 

 

……時々、ぐっさんを怖いだとか、気持ち悪いだとか、思うことはある。

でもそれ以上に……ぐっさんがいない 生活なんて、考えられない。

 

だから私は、ぐっさんに誘導されていても、ぐっさんを頼ることをやめられない。 

だけど……ぐっさんの言いなりにはならない。

ぐっさんの知らない私だって、ちゃんといるはずだから――。

 

 

 

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参考文献

 

素材取得元